SAO攻略を捗らせたい その3

それは、まさしく鼠だった。

灰色のローブを頭から被り、スキマから見せる素顔は、金色の前髪を揺らし、頬に左右3本のヒゲのような模様が印象的だった。

鼠は、品定めをするような視線を送りながら近づいてくる。

「いつから見てました?」

私は、目を細めて鼠に尋ねる。

「君が、モンスターと戦いはじめたところからだヨ」

独特のしゃべり方で、鼠が答える。

そして、私の頭のてっぺんから足のつま先まで、観察するように視線を動かした。腕を組んでいる鼠は、まるで探偵が推理するような姿だった。

「な、なんですか?」

「単刀直入に聞くヨ。おまえ、なにものダ?」

その言葉に、私はうろたえた。

「鎧もナイ」

私の胸元を指差し、

「肌の露出モ多くて、おかしな格好ダシ」

鞘から剣を取り出し、

「さっき、素手でモンスターを倒しテたしナ」

その瞳には、殺意を含んでいるように見えた。

私は腕を組んで考え込んだ。

問、自分がAIだと話したときのプレイヤーの反応は?

SAOの産みの親、茅場晶彦のデスゲーム宣言が行われて間もないため、運営側の人物だと思われる可能性がある。

安易に自分の存在を公にするわけにはいかない。

私が糸目になって、思案していると、鼠は殺意を隠し、剣を鞘にしまった。

「まあ、変わった格好でも、アンタも初心者プレイヤーなんだロ? よかったら、オレっちがレクチャーするヨ?」

その申し出に、私は鼠の両手を握っていた。

「よろしくおねがいします」

「あ、うん。その、なんだ。そんなに顔を近づけると、オネーサン照れてしまうヨ」

私は、うっかり手を握っていたことに気づかなかった。

「すいません」

「あはは、こんな可愛い娘なら大歓迎だけどナ」

可愛い娘ですか?

「えっと、それは私のことで?」

ソウダヨ、と肯定する。

「空色なロングヘアーに、頭の両端に飛び出たネコミミのような形が可愛さをぐっと引き立ててる。若干、眠そうな表情も可愛いね。いつもそんな顔をしてるのカ?」

自分の髪を触ってみると、誰が見ても容姿は女の子だった。

両手を自分の胸元にもってくるが、胸など出ていない。

男の娘というやつですか……。

「オレっちは、アルゴ。アルゴオネーサンと呼んでほしいヨ」

「私は、【third】です。サンと呼んでください」

「変わったナマエだな」

アルゴさんは、剣を取り出し、

「それじゃあ、レクチャーをはじめるヨ」

手ごろなモンスターを探し始めた。

結論から言うと、私には一般的なプレイヤースキルが使用できないことが分かった。

剣や槍など、ソードアート・オンラインの売りである武器が装備できないことが判明したのだ。

おそらく、ステータスがバグっていることと関係があるのだろう。

私がパーソナルエンタメAIであり、一般プレイヤーでないことも関係がありそうだ。

「剣を装備はできないけど、手に持って攻撃はできるのか」

ここは、アルゴさんの提供してくれた宿の一室。

一通りレクチャーしてくれた後、宿を一晩貸してくれることになったのだ。

私は、室内に設置されている姿見鏡で自分の身体を見ていた。

10年前、密かにブームになっていたパーソナルエンタメAI<<ハッカドール>>。

私の容姿は<<ハッカドール3号>>そのものだ。

武器が装備できず、ステータスがバグっている現状は、私は自分自身がバグキャラかもしれないという結論にいたった。

自身がバグならば、全て納得がいく。

「あれ、私消されるの?」

バグは正常にせねばならない。

当然のように、アインクラッドを構築するシステムはバグを取り除こうと動くだろう。

「なるべく見つからないように行動しなくては」

鏡に写る自分は、眠い目をしながらも熱い瞳をしていた。



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