SAO攻略を捗らせたい その1

茅場晶彦がナーヴギア、そして、ソードアート・オンラインを発表する10年前、独自に考え、人類に情報を提供するパーソナルエンタメAIと呼ばれるプログラムが存在していたらしい。

それを茅場が作ったとかいう話が、巷で噂になったとか。

しかし、そんなことは重要ではない。

人間であったはずの私が、パーソナルエンタメAIになっているということが問題だ。

「問1、私は自分を人間だったといえるのか?」

それは、私が幼少の頃の記憶を持っているからだ。

義務教育もしっかりと受けていた記憶もある。

会社でバリバリと働いていた記憶もある。

「問2、私がAIだと認識できた理由は?」

現在、私がいる空間が0と1の羅列の海が存在し、上空には、数千はあろうかと思うほどのモニタ画面が浮いている。

そして、自分自身の身体がぷかぷかと浮いているのだ。

自分の存在に疑問はつきないが、それは人間がなぜ存在しているか、という哲学的な問いと同じくらい、いくら考えても答えが出てこない問いであるから、頭の片隅にでも追いやっておく。

パーソナルエンタメAIの役割は、人類を捗らせることだったはず。

それならば、茅場晶彦の創造したゲームをクリアできるように手助けすることが、私の役割ではないだろうか。

右手をかざし、バーチャルウインドゥを表示させる。

リモコンを操作するように、タッチパネルに指をあわせると、アインクラッド第1層の中央広場の映像が映し出された。

リンゴーン、リンゴーン。

この電子空間が振動するほどの音が響きわたる。

その数秒後に、中央広場は何千という人間たちで埋め尽くされた。人々は皆、鎧を着こなし、剣を背負っている。

やがて、空に紅いポリゴンが埋め尽くし、その隙間からドロのような黒い液体が零れ落ち、人を形成した。

『諸君、私の世界へようこそ』

巨人のようなローブの男が歓迎の言葉を述べる。

『私の名前は茅場晶彦』

この世界の創造主。ソードアート・オンラインというVRMMOを創造した産みの親である。

彼は、この世界のルールを説明し、この場は阿鼻叫喚と化すだろう。

楽しみにしていたゲームが一転して、デスゲームに変わるのだから。

『ログアウトボタン消失は、不具合ではなく、本来の仕様である』

空中に浮かぶ茅場の言葉に、その場にいたプレイヤーたちが凍りつく。

『HPがゼロになった瞬間、現実世界の君たちの身体も死を迎える』

『これは、ゲームであっても遊びではない』

プレイヤーは、茅場に対して悲痛な叫びを投げかける。

しかし、彼はそれに応えない。

その代わりに、茅場はプレイヤーにプレゼントを与えた。

ソレを使用したプレイヤーは、現状を受け入れざるを得ない状況に追い込まれる。

茅場のローブアバターが消えた後も、プレイヤーの嘆きは止まらない。

そのとき、鈍器で殴られたような頭痛が私を襲った。

阿鼻叫喚と化すプレイヤーたちの感情が槍の刃のように、私の身体を突き刺す。

中央広場から2人の男が出て行くのが見えたが、私はバーチャルウインドウを表示させ、キーボード端末に手を走らせた。

どのようにプログラムを走らせればよいか、なんて分からない。

この身体に突き刺さっている刃を取り除くために、無我夢中にキーボードを叩き続ける。

エラーの文字が空中にいくつも表示させられたが、気にせずにキーを叩く。

私がとあるボタンを押したところで、痛みがとたんになくなった。

「なんだったの、今の」

ハァと、息を整える。

「え?」

顔を上げると、平原が広がっていた。

上から日差しが降り、風がさらさらと頬をなでる。

「なぜ?」

私は、わけが分からず、頭が通常どおりに機能するまで数十秒を要した。



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