ただ真っ白な空間に、俺はぽつんと立っていた。
左右を見ても、上を向いても、てしない白が広がるだけだ。
しだいに気分が悪くなってきた俺は、目を瞑り、蹲る。
何がどうなってんだ――。
俺はつい先ほどまでの出来事を思い返す。
会社帰りにコンビニでビールとつまみを買い、帰宅後はテレビに映る映像をぼんやりと眺め、舌鼓をうった後に、ベットにもぐりこんだ、はずだ。
どこもおかしくない会社に勤めるサラリーマンの日常風景。
これは夢なのか。
『あ、ごめーん。うっかりしてて、背景かえるのわすれちゃった』
頭上から間の抜けた声が聞こえた。
俺は立ち上がると、白い風景が一変していた。
草原が広がり、青い空からは日光が降り注いでいた。
「ああ、やはり夢だ」
自分自身を納得させるために、この風景を見えた感想をつぶやく。
「夢じゃないよ、ここは死者が最初に訪れる、あの世の入り口というやつだよ」
後方から声が聞こえ、振り返る。
「おかえりなさい、というべきかな?」
「あなたは……」
俺の前にいたのは、二次元キャラクターだった。
テレビアニメでお馴染みのデザインされた人物が俺の前に立っていたのである。
「ああ、君の記憶をちょっとのぞかせて貰ってね。二次元キャラクターで都合の良い人物がいたから、自分の容姿を変えてみたのだよ。神様といえば、白髭のふさふさしたおじいさんが一般的なんだけど、君も嫌でしょ、そんなテンプレ」
そういいながら、腰に手を当てる、淡い紫色のショートヘアーを持つ少女。髪には両サイドについたコントローラーの十字ボタンのようなアクセサリーがゆれていた。
「やっぱり、夢だな」
彼女を観察してみたが、結論は同じだった。誰でも見る都合のいい展開の夢だ。
「だから違うというのに。私は神様なんだよ! ついでにいうと女神様なんだよ!」
たしかに容姿はゲイムギョウ界の女神様の一人の容姿と瓜二つだ。
「話が進まないから、あなたが納得していると判断して先に進めます」
「ええ~……」
自称女神様は、コホンと咳払いをひとつすると、ビシッと人差し指を目の前に突きつけた。
「あなたは、死んだんだよ!!」
「なんだってーーっ!」
広大な草原に俺の声が響き渡った。
「え、もしかして、どこぞの二次小説みたいに、あなたのミスで死んだんですか?」
「神様がミスするわけ無いでしょうが!」
女神様は、両手を突き上げて抗議をする。身長が俺より低いため、子どもがかんしゃくを起こしたようにも見える。
「え、でもあなた『ねぷねぷ』ですよね」
「それは容姿だけ真似ただけです! まあ、こちらとしてもあなたの死は予定にはなかったのだけど」
女神様はもう1度コホンと咳払いをすると、一冊の書物が出現した。
「本来なら、あなたの人生で前世のカルマを清算してこちらにもどってくるはずだったのですが」
カルマとは、悪業のことだっただろうか。
「中途半端にもどってきたために、もう1度人生をやり直してもらいます」
「それは転生ということですか」
「そのとおりです」
俺は自分の両頬を思い切り引っ張ってみた。
その痛みが夢でないことを証明してくれる。
二次小説のような展開が人生で味わえるとは。
俺は女神様に感謝した。
「特典は?」
「そんなものあるわけないじゃない」
おまえは何言ってるんだ、とでも言いたげに女神様はため息を漏らした。
「カルマを清算するために、人生をやり直すのに、難易度を下げてどうするの」
たしかにそのとおりだが、不満は残ったままだった。
「そんなこと言う人には、少々難易度を上げましょうかねえ」
女神様はニヤリと笑い、指をパチンと鳴らした。
その瞬間、全身が光りに包まれ、体が縮む感覚が襲う。
「いったい何をしたんだ」
「さて、なんだろうね、……あ」
全身の光りが薄くなったとおもったら、掃除機が吸い込むように後ろから引っ張られた。
「なんだよ、これ!」
まるでブラックホールに落ちたかのように、女神様の姿が小さくなる。
そんな中、俺はもっと『ネプテューヌ』の姿を見ていたかったとくやしく拳を握っていた。
長い間小説を書いていなかったため、リハビリのために書きました。
よくある神様転生ですが、もし転生をする前に邪魔が入ったならどうなるでしょうか。
テンプレに少しだけ変化を加えた展開になっているといいなあ。