【げんえいにっき5】星と月と金と白

転入翌日に、昨日出会った先輩方とは別の人がいました。

わたしたちと同年代の女の子です。

笑顔はなく、ムスッとしていますが怒っているわけではありません。

クールビューティというやつでしょうか。

彼女の後ろに着席したわたしは、彼女に何を言おうか悩んでいました。

「うちは、昨日転入してきた白金ぎんかや。よろしゅうな」

ぎんかは、わたしの悩みなどおかまいなく、すばやく行動に移します。

その行動力、見習いたいです。

「そんで、こっちが白金りんね。うちの家族なんや」

わたしの両肩に手を添えて、自己紹介をされた。

どうも、とだけ返しておく。

「星河せいら、よろしく」

彼女はクールに返事をした。

それ以降、3人の楽しい会話がはじまります。

でも、ぎんがのマシンガントークをわたしたちが聞いていただけなんですが。

占い師の専門学校といっても、一般科目は以前の学校と同じで、選択科目が強制的に占いの勉強になるといったところでしょうか。

義務教育を何度も受けているわたしとしては、子守歌を聞いている感覚です。

エティアさんが、わたしの授業態度に見かねて、小テストのような答案用紙を持ってきました。

すらすらと鉛筆を走らせ、答案用紙をエティアさんに提出したときの顔は面白かったです。

「なん……だと……」

と、声が出そうな表情をしていました。

「りんねは、前の学校でも一番やった」

ぎんかは、自分のことでもないのに、自慢気に語った。

何でもできる、と思っているようですが、わたしにもできないことがあります。

それは、体育の授業です。

体育は、タロット使いの訓練の意味合いも兼ねているようです。

痛みを感じなくなった身体を持っているため、運動をまったくしていなかったのです。

仮に、血を出したり、骨折しても、脳が痛みを感じません。

何度も生まれ変わった代償なのでしょう。

「それでも、柔軟はできるのだろう?」

あ、強制参加ですか、そうですか。

何年ぶりか、体操服に腕を通します。

まだ、ブルマは存在していたようです。

「暑い」

日向に出て3秒で回れ右をしますが、ぎんかに背中を押されてしまいました。

「よし、まずは準備運動だ」

どこからか、ラジオ体操でおなじみの声が聞こえてきました。

それにあわせて柔軟をします。

機械音が途切れたら、わたしは運動場の隅で見学していました。

何もしていないというのに、授業終了時間を迎えたときには、わたしの顔が真っ青になっていたそうな。

ぎんかが初めて出動する日がやってきました。

タロット使いというのは、一言で表すなら魔法少女です。

ぎんかがいつ覚醒したのか気になりますが、それよりもぎんかの力を見てみたい。

しかし、タロット使いが力を振ることができるのは、アストラルクスと呼ばれる異次元の世界らしい。

エレメンタルタロットに選ばれた彼女たちしか行くことができないから、力を見せようにもできない。

つまり、わたしはぎんかが戦っているとき、無事を祈ることしかできない。

「心配しなくても、わたしたちでサポートするので、安心するといいでしゅ!」

ドンッっと胸を張る三姉妹。

「役割分担ってやつやな。しっかりと仕事してくるさかい、安心しいな」

そう言って、ぎんかはやる気十分にでかけていった。

幼いながらも、働いている自分の姿を眺めていた昔のぎんかを思い出した。

現在の何もできないわたしと立場が同じことに気付くと、少々悲しくなった。

転校して1か月くらいがすぎました。

ぎんかの警備の仕事は順調そのもの。

勉強しかしていないことに苛立ちを感じたわたしは、休日を利用して過去の自分の場面を振り返りながら、街を散策していました。

自分の死ぬ場所を巡るのは、気持ちのいいものではありません。

その体験がフラッシュバックした日は、ゼリー飲料です。

まあ、この街に引っ越してきてから、ほとんど10秒チャージが自慢のゼリーしか口にしていません。

さて、過去の記憶を振り返りながら、街を歩いていると、紳士的な男性と出会いました。

紳士といっても変態紳士ではありません。

セバスチャンという名前がよく似合う執事服の男性でした。

そして、その隣りでは十品な雰囲気を出す少女。

彼女が、有名な月詠財閥のお嬢様だというのは驚きです。

彼女は、わたしの顔色が悪いと見ると、執事に車を呼ばせて、連れ込まれた。

しばらくして、車が泊まり、執事がわたしを連れていくところで、わたしの目の前はまっくらになりました。

意識がなかったのは、どれくらいだろう?

わたしは、とても清潔で、何もない部屋で目が覚めた。

「お目覚めになられましたか?」

渋い声でわたしに尋ねてくるのはセバスチャン(仮名)でした。

「はい、休ませていただき、ありがとうございます」

ベットの上から失礼して、頭を下げる。

隣りでは、いかにもお嬢様という気品を漂わせている少女がいた。

過去の記憶を手繰り寄せると、太陽あかりの隣りに彼女の存在があった。

「失礼ですが、月詠財閥の方ですか?」

「左様でございます」

お嬢様は答えないのか。

「ここは、お嬢様の別荘でございます」

そう、と応えて、外を見やる。

「なんか、わたしに似てる」

彼女の無表情は、昔のわたしに似ていた。

「ゼバスチャン、この屋敷に、キッチンと調理道具はありますか?」

「はぁ、ございますが。それと、私はセバスチャンではありません」

「案内して」

わたしは、承諾の返事を受けずに、キッチンに向かった。

キッチンに立ち、調理を始める。

その様子を外から除くように、お嬢様と執事が見ていた。

出来上がった料理を皿に盛りつけ、彼女に差し出した。

「たこ焼き?」

それは、父さん直伝のたこ焼き。

わたしが、白金の家族になったきっかけの品。

「食べてみそ?」

お嬢様は出来立てかつおぶし踊るたこ焼きをひとつかじる。

あつあつ、とホクホクさせながら食べると、おいしいとつぶやいた。

「白金の幻のたこ焼き、とも一部の人で噂されているたこ焼きよ」

今日のお礼、それ食べて元気出しなさい。

月詠の別荘からの帰り道は、執事が送ってくれた。

車内で、彼から感謝を言われた。

さらに2ヶ月が過ぎた頃、セフィロ・フィオーレに新たな仲間が加わります。

緑のロングヘアーを靡かせて登場したのは、どこかのお嬢様。

「月詠るなです。よろしくおねがいします」

月詠財閥のお嬢様が、わたしに笑顔を向けていた。

原点:幻影のメサイヤ

原作:幻影ヲ駆ケル太陽

作品:げんえいにっき