【げんえいにっき8】あねといもうと

サンチョ・パンサ社長こと父さんが、わたしたちをパーティに招きました。

日ごろ頑張っているタロット使いたちをねぎらうためです。

戦っていないわたしが、なぜパーティに呼ばれているのか?

養女とはいえ、わたしも白金弥太郎の娘ですから、多くのお金持ちが集まる場に出席しないわけにはいかないのです。

当然、それなりの服装に着替えなくてはなりません。

「すごい似合ってるよ、ぎんか」

わたしは、ドレス姿のぎんかに微笑んでみた。

「そうか、なんや照れるなあ」

「お嬢様みたい」

「いや、ほんまにお嬢様なんやで。っていうか、あんたもやろっ」

長いツッコミが返ってきた。

「ササミサラダ……」

せいらの目はサラダになっていた。

「スイーツもあるさかい、これ食べてドーンとスタミナつけてや」

父さんがそう言うと、せいらはサラダの盛られた皿めがけて歩きだしていた。

「わてらは、挨拶まわりがあるさかい」

父さんは、ぎんかを呼び、二人で出かけていった。

その場に残ったのは、あかり、るなちゃ、わたしの3人。

「あれ、りんねはぎんかたちと行かないの」

「ああいうのは、好きじゃないの」

わたしは、あくまでおまけだし。

「寂しくないの」

あかりが表情に影を落とした。

「まあ、たしかにひとりだけぽつんと、待たされていたら寂しいね」

「そういうことじゃないんだけど」

「るなちゃも、賑やかな場所は嫌いなんじゃないの?」

ごまかすように、るなちゃに話題を振ってみた。

「そうですね、こういうところは疲れますね。だから、じっと動かずにいると疲れません」

「話しかけられても困るよね」

そうですねと、わたしに返事を返するなちゃの表情は暗かった。

「なんか、わたしだけ仲間はずれ」

あかりがしょんぼりした顔をしていた。

「こんにちは、お嬢様」

見知らぬ少女の声ではありません。

よく知る声の主は、わたしの手を引っ張ってアストラルクスに連れていった少女でした。

背筋が凍るように、寒さが走ります。

「私と少しお話しいたしませんこと?」

その言葉の裏には、邪悪な笑みが見えます。

従わないと、どうなるかわかってるな?

そのようなことを目が言っているような気がしました。

わたしは、彼女に手を引かれて、会場の外へと連れ出されます。

「いいのかな、私にホイホイついてきちゃって」

「それは、確認する意味はないやろ」

「そうね」

少女は、クスッと笑う。それは、とても妖しく魅了するようでした。

「……単刀直入に聞く。何が目的?」

「そうね、あの娘を手に入れるには、あなたたちが邪魔なの」

あの娘、というのが誰かはわからないけど、彼女は、わたしたちが目障りらしい。

「だから、消えてほしいの」

鋭い視線が、わたしの胸を射抜いていた。

左手から液体がつたうように、地面に向かって垂れてくる。

恐る恐る左腕に視線を向けると、ナイフが立っていた。

黒から赤に服が塗り替えていく。

「あら、残念」

少女は、残念どころかうれしそうに、ナイフを抜いた。

「これから一人ずつ、あの娘からいなくなる」

少女らしくなく、ケラケラと笑いだす。

「最初は、あなただから、覚えておいてね」

堂々とした犯行予告が告げられた。

それは、【しにがみ】からの明確な予言のような気がしました。

わたしは、その場でエティアさんに電話をかけました。

自分ひとりで先に帰るのは、みんなに悪いのですが、血で染まったドレス姿で戻るわけにもいきません。

エティアさんに迎えを用意してもらい、ぎんかたちには気分が悪くなったと、適当な理由をつけて帰りました。

ぎんかは帰る早々、わたしがベットで寝そべっているのをいいことに、わたしに馬乗りになったのです。

このまま、「お前が、泣くまで、殴るのをやめない!」と殴りつづけたり、わたしのささやかな胸をもみしだいたりするのでしょうか?

ちなみに、胸はぎんかの方が大きい。

マウントポジションをとられたわたしには、ぎんかが何をしようが抵抗ができません。

「これ、どないしたんや?」

ぎんかは、わたしの腕に包帯が巻かれていることに気付いたようです。

「ちょっと、転んだだけよ」

「うそ、つくなや。あんた、刺されたって聞いたで」

その情報を漏らしたのは誰かは、想像にたやすかった。

「……心配させたくなかったんや」

「何かあったら、隠さずに私に報告しい」

ぎんかの目はいつになく真剣で、

「あんたに何かあったら、うちは……」

だからこそ、この生をいつまでも続けたいと思えてきた。

「大丈夫、わたしは、うちは、あんたと生きていきたいと思うから。まだ、死ぬつもりもないから」

わたしは細い腕で、彼女を抱きしめた。

そして、怪我のない左手で彼女の綺麗な金髪を撫でる。

「なんや、姉ちゃんの手、気持ちええな」

「どちらが姉か妹か、なんて決めてなかった気がするけど」

「いま、うちが決めたんや。姉ちゃんは、昔からなんでもできて、うちの憧れやったんや」

「現在進行形で、わたしにできないことをたくさんしてるじゃない」

ぎんかは、わたしの上から転がり、隣りに着地する。

「それが、うれしかったんや。うちにも、できることがある。役に立てるって」

わたしは、いつの間にかぎんかの手を強く握っていた。

「でも、姉ちゃんを助けられるほど、強くなかった」

わたしがぎんかの瞳を見るのと、ぎんかがわたしに振り向くのは、同時だった。

ちょうど、二人の唇が触れ合うほどの距離。

「ほとんど、わたしがよけいなことをしたからだと思うけど」

今回の怪我も、自業自得。

「アストラルクスで、力もない姉ちゃんがダエモニアに突撃するのを見て、無謀だと思ったんやけど、それ以上にうれしかったんや。つらいときに、駆けつけてきてくれたヒーローみたいやった」

「あなたは、天使だったけどね」

そう言うと、ぎんかは顔を真っ赤にして、

「あ、あれは節制の力なんやで」

わたしは目の前の彼女がとても愛おしくて、

「姉ちゃん!?」

抱き寄せていた。

「しばらく、このままでいさせて」

わたしの思わぬ行為に、ぎんかは成すがままに、身体を任せた。

この日、わたしは本当の意味でに『白金りんね』になった気がする。

原点:幻影のメサイヤ

原作:幻影ヲ駆ける太陽

二次小説:げんえいにっき