【げんえいにっき4】しにがみはみている。

わたしは、ぎんかとともに引越しの作業をしていました。

永瀧の地には、何度もの生まれ変わり、太陽あかりや心崎冬菜と同じクラスになったこともありました。

時には、優等生を。

時には、問題児を。

いろいろな顔を演じてみましたが、最後は血まみれになることは変わっていません。

いつしか生きる意味すら分からなくなっていましたが、今回はがんばれそうです。

「今日から、ここがわたしらの住まいなんやな~」

そういって、ぎんかはどこからかお気に入りの小物を取り出して、部屋に配置していきます。

あれよあれよという間に、部屋がもので溢れかえりました。

あの、わたしの席がないのですが。

おめーの席ねーから、ってことですか?

そう考えていると、ぎんかはぬいぐるみがつまれたベットに寝転がって、わたしを手招きしました。

「ベットはひとつしかないんやし、こっちにきてええよ?」

照れながら言うぎんかには、何か頬ずりしたくなります。

雑誌を広げて、インテリアに良さそうな小物を見ていきます。

そして、近所の雑貨屋を覗いたり、通販で取り寄せたりして、わたしたちの部屋はたこ焼きが主なグッズで埋もれていきました。

ちなみに、わたしのお気に入りは、たこ焼きクッションです。

セフィロ・フィオーレ永瀧支部――。

そこは、占い師を育成している学校、らしい。

校門の前では、エティアさんがわたしたちを待っていた。

以前に会ったときにも思ったことだけど、占い師は奇抜な格好の方が売れるのだろうか。

エティアさんに促されて、会議室に通された。

そこで、わたしたちは先輩と思われる人物に遭遇する。

プリシラ・トワイライトと、メルティナ・メルヴィス。

大人しそうな片方に、活発そうな片方。だけど、大人の余裕のようなものが感じられます。

ただ、興味本位で白い髪をさらさらとなでるのはこそばゆいので、かんにんしてつかーさい。

先輩方にいじられた後、三つ子の子どもが現れた。

「天道三姉妹なの~」

「でしゅ!」、「なの~」と語尾につけてアピールしてるけど、同い年か年上だとわたしの感が告げている。

この子たちは、生徒の健康管理を担っているそうです。

やっぱり年齢を偽っているでしょう。

「おいしそうな名前」

天丼はわたしも好きです。

「てんどん、じゃないの~!!」

三者そろって怒っていらっしゃる。

わたしは、彼女たちにニヘラと微笑むと、なぜか部屋の隅っこで震えだした。

「食べられるの!?」「なの!?」「でしゅ!?」

おもしろい生き物だなあ。

「悪人が見せる顔やん」

ぎんかの言葉が胸を抉った。

先輩たちの他にもう一人いるらしいけど、今はいないようです。

「うちは、白金ぎんかいいます。よろしゅう頼みます!」

ビシッと敬礼したぎんかが、次はあんたの番やで~と、ひじで突っつく。

「…………………リンネ」

別に無口キャラを演じてるわけじゃない。

自己紹介って、唐突に振られると、何を言えばいいかわからないじゃないですか。

案の定、その場にいた全員が苦笑していた。

遥か昔に出会った占い師に、【死神】のタロットカードを提示されたわたしは、その後に不幸な事故にあいました。

それは、いずれも死に直結するものです。

実際は、死んで生まれ変わったのですが。

わたしは、生まれ変わりのことを伏せて、タロット占いの結果で大怪我をしてトラウマになった、ということだけ、その場にいる人たちに告げました。

「タロットカードにおける【死神】は、死を表したものではありません」

エティアさんは、そう前置きした後、タロットカードの意味について教えてくれました。

死神は、物事の終わりと新たな始まりを象徴している。

このカードが出たときは、何かが終わろうとしていることを意味している。

そして、古いものが終わり、新たに始まろうとしているという。

……わたしの場合は、人生終了してしまったんですが?

わたしは、言葉を心の中でグッと押しとどめて、「安心した」と営業スマイルを浮かべました。

毎度毎度の占い結果に死神が存在するのは、何か意味があるはずだと、前向きに考えるようにします。

転校初日は、何事も起こらずに終了しました。

夕食を買うために、ぎんかとは一旦別れます。

うちも行く、とぎんかは言いましたが、理由をでっち上げてあきらめてもらいました。

永瀧の地には、わたしの死んだ場所がいくつかあります。

その場所を確認したいと思ったのです。

場所は感覚で覚えてる。

近づくにつれて、手足が震える。

坂道に駐車された軽トラック。

何らかの理由で、ブレーキが壊れ、坂道を後ろ向きに走る。

その先には、わたしが――。

「ヒッ」

ぐちゃあ、となったからだが、ちがついてた。

それは、幻覚。

でも、あまりにリアルに血でぬれていく服と、冷たくなっていくからだの感覚が脳にこびりついています。

「……かえろ」

一刻も早く、その場から去りたいために、早足でその場を離れました。

「ただいま~」

わたしが買い物袋をぶら下げて帰宅すると、ぎんかはベットで寝そべりながら雑誌を読んでいた。

買い物袋をテーブルの上に置いたとき、ぎんかはようやくこちらを見た。

「おかえりー、今日はなんやの?」

「弁当」

ぎんかの問いに短く答えた。

弁当には、夕方セールの30%オフのシールが存在感を出している。

貧乏から救われ、大金持ちの仲間入りをしても、お金の消費には気を使ってしまいます。

わたしは、袋の中から自分のものを取り出し、座り込む。

「そんだけで足りんの?」

わたしの手にあるのはゼリー飲料。

「食欲、ないんです」

ちびちびと中身を飲んでいると、視線を感じた。

窓の外を見ていると、そこにはないも無く、ぎんかがせっせと食べる物音だけがしていた。

原点:幻影のメサイヤ

原作:幻影ヲ駆ケル太陽

作品:げんえいにっき