【げんえいにっき】中学生になれません。

1回目

どうも、吉田です。

うそです、ヨシダなんて名前ではありません。

今のわたしは、その名を捨てました。

というのも、わたしは転生したらしい。

前世の記憶、知識を引き継いでいるため、学校の勉強ができることなどあたり前。

常に学年トップの成績を維持しているからなのか、一部の生徒から嫉妬の目で見られることもしばしば。

でも、こちらは前世とあわせれば30歳を超えているのだから、いじめなどをされてもさらりと流すメンタルは持ち合わせているのですがね。

そんな強くてニューゲームな人生は、唐突に終わりを告げました。

何の前兆もなく、

ビル崩落に巻き込まれて死んでしまったのです。

2回目

どうも神様は哀れな子羊のために、3度のチャンスを与えてくれたようです。

前回は、自分の知識を活かしすぎたために、恨みを買いすぎたんでしょうか。

まあ、わたしが男の子だったならその値札の3倍で買って、さらに倍返ししているところです。

しかし、今は女の身体なので、腕力に訴えることなどできません。

とりあえず適度に力を抜いて勉強することにしましょうか。

テストでは80点前後くらいを狙って、たまに名前を書き忘れて0点を取ったこともあります。

とりあえず目立たずに過ごしていたのですが、どこを間違えてしまったのでしょうか。

今度は、坂道を逆そうする軽トラック(過載積)につぶされて死にました。

なんですか、もう。

3回目

だんだん、自分の命が軽く思えてきたヨシダです。

神様は、私に延長戦を提案したようです。

今回の人生で気づいたのですが、

わたしは、同じ人生を繰り返しているようです。

生まれる場所は前回、前々回と同じ。

名づけられた名前も同じ。

通う学校まで同じなのです。

ジャンルで言えばループものでしょうか。

そんな小説をよんだことがあります。

しかし、これまでの経験から、わたしは小学生から抜け出せず死んでしまいます。

テレビの箱から流れてくる事件報道を、わたしは他人事のように見ていたのですが、

事件事故が身近でしょっちゅう起こっている気がするのです。

この街は、事故が多発する土地柄なのでしょうか。

のろわれているのではないでしょうね。

そう考えていた直後、地面がなくなり落下した。

落下中に、空飛ぶ人影と怪物のような影が見えた気がする。

やはり、この街には得体の知れない何かがいる。

4回目

縁起が悪い数字はしまっちゃおうね~。

ネタに走らなければやってられないわ。

まるで地縛霊のごとく、この街に転生してしまうわたしです。

勉強などどうでもいいので、この街に何が潜んでいるのか暴いてみようと思います。

すでに4回目、いえ、5回目かな。

何度も繰り返していると、学校の勉強などゲームのBGMと変わりません。

わたしは、今まで優等生として先生や生徒たちに認識されていました。

しかし、今回は不良、問題児として認識されています。

まあ、授業をボイコットしたり、平然と遅刻を繰り返していれば、そうなりますね。

だけど、テストの点だけは良いので先生方は、私の扱いに困っているようでした。

この地で起きた事故は、おかしな共通点がある。

事故現場から離れた場所に腹部を刺された死体が見つかっているのです。

事故現場の近所で、事件が!?

因果関係がありそうな予感がしたのです。

規模の大小関わらず、事故の翌日に、事故現場の近辺に原因不明な死体が出てくるのです。

わたしは、実際に足を運びました。

そこは、ブルーシートで覆われていたり、立ち入り禁止のテープが張られていたりしていました。

推理ものでは、犯人は現場に戻ってくるという展開がありますが、容疑者と疑いたくなるような怪しげな人たちを目撃してしまいました。

まるで絵本の中から登場したような人形っぽい人。

フードを深く被っているゲームで登場するようなローブな人。

どうも行く先々で、特徴的な二人を見かけます。

後に、学校のとある子がバイトで占い師をしているそうなので、彼らもそういう関係の人たちなのかなと思いました。

死を繰り返していると、人を疑り深くなってしまいます。

気をつけなくては。

事故調査を行っていると、ローブの人が声をかけてきました。

フードを深くかぶり、表情は伺いしれませんが、彼は占い師らしいです。

1度無料で自分を占ってくれるそうな。

わたしは、あまり占いというものを信じない性質なのですが、

事故現場にたまった怨念を感じると、恐怖心を抱かせるほどの低い声で言ってきたら、嫌でも不安になってきますよ。

そうして連れられたのは、いかにも占いの館のようなものではなく、簡易テントのような場所でした。

いいのかいホイホイついてきちまって、と言いたげに口を歪ませて、彼はタロットカードを机の上におきました。

1枚1枚丁寧に置いていき、いくつか質問しながら、裏返しのカードをめくっていきます。

そして、中央に配置されたカードをめくると、

【死神】

明らかに死を連想されるカードが、ドドンと音を立てるように存在していました。

占い師が正位置や逆位置の説明をしています。

ですが、そんなことはどうでもよくなっていました。

過去の死が最初から決定付けられていたとしたら。

神様は、わたしが嫌いなようです。

そこから、どのように帰ったのかは覚えていない。

5回目

なにが起こったかわからなかった。

帰ったと思ったら、赤ん坊になっていた。

頭がどうにかなりそうだった。

前回の記憶は、占い師に【死神】カードを提示されたところから先は覚えていない。

今までは死ぬ瞬間まで、その痛みすら覚えていたのに。

今回は、それを思い出せなかった。

どういうことなのだろう。

あの占い師が何かしたの?

疑問が頭を離れない。

もうすでに50年以上は生きているのだろうが、身体は12歳を超えられない。

どうあがいても短命な人生。

その重たい現実に、わたしの髪は色素を失ったようでした。

5回目の小学6年生。

いや、6回目?

回数はどうでもいい。

進級するまでに、わたしの髪は完全に白髪になっていました。

クラスメイトたちは、わたしを気味悪がって近づいてきません。

しかし、彼女は違っていました。

太陽あかり。

その名のとおり、彼女はすべてを照らすように明るく、笑顔が素敵な少女。

彼女とは、何度か同じクラスになったことがあります。

しかし、あまり接点はありませんでした。

まあ、話しかけられても、スルーしていた、というのもありますが。

ひかりあるところ、かげができる。

太陽あかりあるところ、影できる。

彼女を見ていると、それがはっきり分かる。

彼女といつもいる冬菜という生徒は、太陽あかりの従姉妹だそうだ。

仲良しのように見えるが、彼女が日に日に、影が濃くなるようにわたしには見えた。

太陽は、クラスの人気者。

他者を引き寄せるが、まぶしすぎて近づけない者もいる。

まあ、わたしなんですが。

その笑顔はを見ると、

「うおっ、まぶし」と思わず叫んでしまいます。

いつしか、太陽あかりと心崎冬菜の両名が、学校から消えていた。

文字通り存在が消えていたようだった。

彼女らのことをクラスメイトたちは覚えていなかった。

いったいどんな魔法を使ったんだ?

そう思えるほどの事象改変だった。

わたしは、二人の行方を捜すために、学校を休んだ。

太陽といっても、光っているわけではない。

あたりまえなんだけど。

だけど、彼女はすぐに見つかった。

あまりに早く見つかったので、思わず細い電柱に隠れてしまった。

彼女の他に、3人の少女がいる。

ひとりは、おっとりとした雰囲気の緑髪のロングヘアーを持つ少女。

ひとりは、ちょっときつい目を持ち青い髪を持つ少女。

ひとりは、淡い山吹色のロングヘアーにフリルの付いたカチューシャをしている少女。

その中に、心崎冬菜の姿はない。

しかし、彼女はいつもどおり輝いているようでした。

小腹が好いたので、中華街の人気店で販売されている角煮まんを買いました。

開店と同時に長蛇の列ができていました。

午前中に売切れてしまう大人気商品なのです。

さすがに5個は買いすぎだったかな?

おばさんから包みをもらい、会計を済ませます。

周囲にベンチを探しながら歩いていると、先ほどのお店の方から抗議の声が聞こえてきました。

「なんやて~っ」と地元とは違う方言が聞こえてきたので、振り返ってみると、太陽あかりとゆかいな仲間たちがいました。

彼女たちは、がっくしと肩を落としながら、こっちに歩いてくる。

おうふ。

どのように声をかけたらいいの?

はたから見たら百面相のようだったでしょう。

あ、と向こうが声を漏らしたのが聞こえました。

目と目が合う~、しゅんかーん……

「これ、あげるっ」

てんぱったわたしは、角煮まんの包みを太陽あかりにおしつけて、走り去りました。

どこまで走ったか覚えていません。

通算50年以上生きている自分が小学生同年代の少女を前に恥ずかしがるとは……。

己の未熟さに、深いため息をついてしまいました。

それから数日後、見覚えのある容姿をした人に出会いました。

前世のわたしに【死神】のタロットカードを提示した占い師。

常套句なトークによってホイホイ乗せられてしまうわたしは、意思が弱いのでしょうか。

何か誘導されているような気がします。

タロットカードを1枚1枚置いていく中で、わたしは【死神】のカードを引きませんように、願っていました。

しかし、占い師はドヤ顔でタロットカードをわたしの正面に突き出します。

【死神】は、どこか笑っているように見えました。

しにがみはわたしをあいしているようです。

原点:幻影のメサイヤ

原作:幻影ヲ駆ケル太陽

作品:げんえいにっき