【げんえいにっき2】お金がなければはじまらない。

6回目。

やばいです。

転生するごとに、自分の容姿がどんどん悪くなっています。

いや、醜くなっているというわけではありません。

可愛いと自画自賛します。

しかし、自慢の艶々した黒髪が、今では白一色に染め上がってます。

そういえば、痛覚もおかしいです。

死ぬ瞬間の痛みが、原因でしょうか。

この容姿のせいで、わたしは、前世まで両親と思っていた人に捨てられました。

これも【死神】のせいでしょうか。

それとも、そのように運命を決定している誰かでしょうか。

しかし、この人生が過酷なものだとしても、

どうせ、またくりかえすのですから。

恐怖など微塵もありません。

わたしは死に慣れてしまったのです。

ただ、無駄死にはしたくありません。

とりあえず、お金をどうやって稼ごうか?

考えながら歩いていたため、わたしは、あの存在に気づいていませんでした。

ぐちゃっ。

身体がありえない音を立てました。

見えたのは、軽トラックの荷台。

建物とトラックの間に挟まれたまま、痛みは感じず、寒気だけが支配していきます。

だんだんと視界が暗くなる中、わたしは次の人生も自分になれることを願いつつ目を閉じました。

7回目

わたし、なんですぐ死んでしまうん?

死ぬごとに、どんどん人間味が薄れていく気がします。

そういえば、笑ったのはいつのことだろう。

相変わらず白い髪に無表情。

まるで着せ替え人形になった気分です。

コーディネイトしてくれる人はいませんが。

小学校に入学する前に、両親は蒸発。

ああ、またか、という想いしか抱きませんでした。

泣けないというのは、ひどく悲しいものです。

前回は、ひとりぐらしをする前にすぷらったになってしまいましたから、トラックには注意しなければいけません。

とりあえず、商店街を歩いてみる。

魚屋に入店してみる。

八百屋に入店してみる。

パン屋に入店してみる。

商店街の店をしらみつぶしに覗いてみる。

自分のポケットからがま口の財布を取り出し、所持金を確認してみる。

んぅ?

なぜ小学生も満たない幼女が財布を持っているのか?

前回の教訓で、両親からこっそりと拝借してきたのだ。

何も持たせず、わが子を捨てる親は、親とは言わない。呼びたくない。

大丈夫、お金は死ぬまで借りるだけだゼ?

ポケットに財布を戻し、これからどうすべきかを考えていると、懐かしい香りが漂ってきた。

その香りにつられるように自然と足が動く。

商店街の外れ、小さな屋台から漂ってくる香ばしい懐かしさを感じさせるものの正体は、

たこやきだった。

わたしは、それに引き寄せられるように、屋台に近づき、まんまるなたこ焼きの上を踊る鰹節を見ていた。

たこ焼きを台の上をくるくるっとひっくりかえす店主の姿は、まさに職人の風格でした。

しばらく、たこ焼きを見つめていると、店主がスッとティッシュを差し出してきました。

「よだれを拭きな」

わたしは、いつの間にかよだれを出すほど、たこ焼きに飢えていたようです。

ティッシュで自分の口元を拭くと、店主が、6個1パック分のたこ焼きを差し出してきました。

「お代はいらねえ、食ったら感想を聞かせてくれ」

どうやら、全部食べていいようです。

わたしは、1つを小さな口へ持っていき、かぶりと先っちょだけたこ焼きをちぎります。

できたてあつあつのたこ焼きは、冷えきった心にスーッとしみこんで広がっていきました。

「おい、どうした、熱かったのか?」

店主の声でふと我にかえると、頬を雫が伝っているのに気づきました。

涙を流すなんて、何十年ぶりなんだろう。

わたしは、思い切って、爪楊枝に刺さっている残りを小さな口に放り込みます。

熱いけど、久しぶりに感じた暖かい気持ちだ。

「おいしい、ホントに。悲しみを忘れてくれるくらい」

わたしの返事に、店主はニコリと笑い返し、もう1パックおまけしてくれました。

翌日、わたしは商店街の屋台のあった場所に行きました。

もう1度、あのたこ焼きが食べたかったからです。

しかし、屋台は昨日の場所にはありません。移動したのでしょうか?

商店街を隅々まで探してみましたが、たこ焼き屋台はどこにもありませんでした。

幼い身体で街中を歩き回るのは、とても疲れます。

どこかで一息つこうとベンチを探していると、黒づくめの車を見つけました。

車が駐車している正面には、古いアパートが見えます。

ドンッという扉を破壊するような音と、罵声が飛ぶ。

近づくと、いかにも職業上堅気ではない人々が、一箇所に固まっていました。

彼らは一通り罵声を言い終わると、息切れをしたのか疲れたのか、車に乗り込み去っていった。

わたしは、黒づくめの車が見えなくなったのを確認して、彼らが扉を痛めつけていた部屋の前にやってきた。

借金取りらしい人たちの取立てから居留守を使っていたならば、顔を出すことはできないでしょう。

わたしは、昨日のたこ焼きパックを取り出し、それをつまみながら、住人が出てくるのを待ちました。

扉が音を立てたのは、陽が沈み、周囲が暗くなった頃。昨日の見知った顔がでてきたので、ホッとしました。

「こんにちは? それとも、こんばんは?」

わたしの声にびくっとした男は、わたしを見るなりホッとした様子。

わたしは、彼に封筒を渡します。中身は、わたしの全財産。といっても、紙切れが一枚入っているだけですが。

彼は、目を白黒させています。

そんなとき、扉からにゅ~と、幼い顔が出てきたことに、今度はこちらがびっくりしました。

遠い昔の人生で、太陽あかりと一緒に角煮まんを買いに来ていた少女と、そっくりだったからです。

おびえた子犬のように、こちらを伺ってきます。

少女にニヤッと笑いかけると、涙を浮かべて奥に引っ込んでしまいました。

なんで?

頭を傾けて、疑問を浮かべていると、

「アハハ、嬢ちゃんの笑みがちょっと怖かったんだろう」と、親父さんが言った。

失礼だな。

口をヘの字にして、いかにも不機嫌な顔をしながら、スッと封筒を取り出した。

「これは、昨日の代金です」

たこ焼き代を見せると、親父さんは苦笑いを浮かべながら、「本当は代金なんかいらなかったんだが」と誰にも聞こえないようにつぶやいた。

その言葉とは反対に、手に取る動作に一瞬の迷いもない。

それほど、切羽詰まっているのでしょうか?

「それほど、お金に困っているのですか?」

わたしは、率直に聞いてみた。

相手とは、昨日会っただけの存在。赤の他人が土足で、相手の心にズカズカと足跡を残しながら入るのは、心証が悪い。

しかし、現状はわたしと親父さんは似たりよったりな状態なのです。

お金がないなら協力し合おう作戦です。

「わたしをあなたのお店で働かせてくれませんか?」

親父さんは、わたしの申し出に開いた口がふさがらないようです。

わたしは、先ほど渡したお金が最後の生命線であることを説明し、同情心をくすぐってみました。

その結果、条件付きで親父さんの店で住み込みバイトができることになったのです。

雇用契約?

そんなもの、小学校入学前の娘と結べるわけないです。

原点:幻影のメサイヤ

原作:幻影ヲ駆ケル太陽

作品:げんえいにっき